魂の仕込みとカジュアル
日本のフランス料理においては、レストランもビストロも
ブラッスリーも、同じ「フランス料理屋さん」というくくりで
見られがちです。しかし、フランスに行くと、その呼び名の差は
歴然とお皿に現れます。まずは食材の質。最高級のフレッシュな
良質ランクを使っているか、格下の冷凍ものを使っているか、など。
そして、一目瞭然に見える「差」はガルニチュール(付け合わせ)。
例えば、お肉を美味しく焼く事に関してはある程度までは訓練ですが、
ガルニチュールだけは 訓練以外のもの、料理人の個性やセンス、
考え方、料理に対する姿勢が出てしまう大事な部分だと思います。
フランスでは、凝ったガルニチュールを出すのがレストラン、
親しみやすいフライドポテトやマッシュポテトなどを出すのが
一般的なビストロ、って感じになっています。
で、うちの店は、ビストロなんですよ。
ガルニチュールを愛しているビストロなんですよ。
全てのお肉は、そのジュのソースと供に
お肉は勿論、最優良のものしか使いません。
無農薬の花ズッキーニと葉玉葱のポワレ
鴨脂の上澄みだけで火を入れた仏産のプリプリ押し麦
(赤ピーマンに詰めて、網脂で包んで香ばしく焼き上げます)
で、うちの店はですね、何度も言うけどビストロなんですよ。
味わいを楽しむ要素の、大きな部分はリラックスが占めていると
思っています。カジュアルじゃなければ、とことん楽しめない。
だから、ドレスコードなんてバカバカしいものは嫌いだし、
堅苦しいサービスも雰囲気も嫌いだし、高すぎる値段設定も
どうかと思うし、こねくり回しすぎた料理も好きじゃないけど、
魂の仕込みに裏打ちされつつ堂々とシンプルを楽しめる料理と、
主役を喰っちゃうような付け合わせが大好きなビストロです。