肉の使命
「マイノリティーきどり」ってやつでしょうか。
バブルが弾けてもなおブランドブームだった90年代、
上から下までブランド品を身に着けた同級生たちを尻目に
東京に染まるのを嫌った田舎者グループの一員だった頃、
「ブランド品」は悪の対象でした。みんな同じ流行りの
バック持ってるなんて格好悪いし、似たようなスーツ
着たり、似たようなブーツ履いたり、似たような髪型と
同じ顔に見える化粧でチャラチャラしてる都会っ子達を
バカにする事で、自分たちの「個性派」という価値を
高める事に必死でした。変な古着着て喜んだりしてね。
時が流れ、今、ブランドのトリコになっています。
食材は、やっぱりブランドこそ美味しさの鍵です。
特に食肉に関しては、どこの産地で、どんな血筋で、
どんな飼料で、運動スペースなどの育つ環境により
その品質が大きく左右されるのです。
スペイン、イベリコベジョータ!
言わずと知れた世界最高峰の、銘柄豚
丁寧に下ごしらえをして、優しく火入れをする時、
その肉のバックグラウンドが料理法に応えはじめ
身を任せてくれるようになるのです。良質な肉は
自分を美味しくする術を知っています。それは、
ブランドを背負って立つ肉の使命でもあるのです。
頑なにブランド品に敵意を向けていたあの頃、
食材に対してこんな思い入れはなく、適当なものを
適当に食べていました。それが今後悔の一つです。
もっとちゃんとしたもの食べてれば、もうちょっと
まともな人間になれたかもなぁ、なんつって。