無視できないシノニム
最近、お客様から 「寝言でさ、移転じゃなくて引越しです。って
書いてあったけど、それって意味が違うの?」と聞かれるんです。
違うんですよ。 いや、同じですよ。 意味はね。
でも、「言葉のニュアンス」ってあるじゃないですか。
本と書物、山登りと登山、ワインと葡萄酒… 同じ意味なんだけど
何となく雰囲気が違うような気がしませんか?日本語ならではの
繊細なニュアンス、無視出来ないんです(面倒くさくてスミマセン)。
飲食店が「移転する」っていうと、なんか「事業拡大!」ってイメージを
持ってしまいがち…じゃないですか? もっと名前を大々的に売ろうとか、
じゃんじゃんお客さん呼んで商売第一!みたいなイメージがど〜しても
(勝手に)頭から離れなくて、うちはそういう気がさらさら無いもんですから、
少し区別したいなぁ〜と思いましてね、「移転じゃなくて引越しです!」と
ムキに言い張ってしまう事態になっています。
新店舗の見取り図です
広くなるどころか狭くなります!
そして厨房は今の倍の広さになります(意味解んないでしょ?)
梅ケ丘で8年やらせて頂いて分かった事がありましてね、それは
うちの料理人が「同時にこなせるマックスはお客様12名まで」という事。
それ以上になってしまうと、料理がなかなか出ない事態に陥って、せっかく
メインのために用意したワインが空になってしまうなんてこともあるし、
会話がなくなってしまうテーブルもあるし、待ちくたびれて眠ってしまう方も
いたりして、「これじゃイカン!」訳ですよ。来てくださった全てのお客様を
笑顔にするのが我々の使命ですからね。
だったら、新店舗はもう最初から12席だけでいいじゃないか!
という事になったんです。 そしてですね、
「もっと美味しいものを、もう少しスピーディに、ベストな提供温度で!」
という事を実現する為に、すご〜く腕の良い調理スタッフを2名くらい
お招きしたと思って(思うだけ)代わりにすご〜く腕の良い最新機器を
いくつか投入しましてね、もっと美味しいソース、もっと満足度の高いお料理を
ご用意して、 愛する食いしん坊 をお迎えしようじゃないか!という事に
なった訳であります。 自己満足と言われればそれまでなんですけどね。
厨房だらけの見取り図…
いいのかな〜(サービス側としてはちょっと不安)
まぁ でもね、何度も言うけど人生一回きりですよ。
お金い〜っぱい稼いだところでお墓には一円も持っていけないしね、
この世でどんなに名声を得ても、天国じゃ通用しないかもしれない。
だけど、泣きそうな程幸せな瞬間とか、自然と湧き出てくる愛情とか、
楽しかった事、美味しかった事、みたいな単純で素直な心の動き…
そういう綺麗な想い出の破片だけは、持っていける気がするんです。
移転、なんて言葉では表せられない色んな大切な想いがあるから、
あえて「引越し」という表現をムキになって使わせて頂いてます。
クルルで楽しい時間を過ごして下さったお客様、その一人ひとりの
お顔を思い浮かべられるような店になりたい。美味しくて幸せな空間を
共有していきたい。そのためだけの、シンプルな「引越し」です。