３年半前、うちの店が新御茶ノ水に引越した当初、
初めて「新・カウンター族」になって下さったのは、
謎に包まれた男性でした。ボトルを一本とって、ひとり
読書をしながらゆっくりと食事を楽しむ姿はスマートで、
とても雰囲気があって、そして謎に包まれていました。

当初は、読書中だから話しかけてはいけないと思って
いましたが、その内にちょっとした世間話に付き合って
下さるようになり、彼の実家のお母様が作った干し柿を
お土産で下さったり、遅い時間に一緒に呑ませて頂いたり、
意外とお茶目な面を見せて下さったり、少しずつ距離が
近づいていくのが、ちょっぴり我々の喜びでした。

彼が初めて女性を連れて来て下さったあの冬の日、
綺麗で知的な彼女は、彼に負けない位の「食いしん坊」！
料理のひとつひとつを丁寧に味わって下さるその笑顔が
とても可愛らしくて「あらら、お似合いの二人だなぁ！」
と思ったのを、今もはっきり覚えています。

「テリーヌ・オ・ショコラ」と「アルマニャック」の
昇天マリアージュをお二人同時に気に入って下さって、
食後はいつも「昇天コース」を注文。楽しかったなぁ。
その後、めでたく結婚した二人は、アルマニャック地方を
新婚旅行のコースに組み込んだほどでした。

うちでデートを重ね、結婚して、普段の食事も記念日も
いつもクルルをひいきにして下さってた今井ご夫妻。
ああ、お別れをしなくちゃいけない日がくるなんて！

ご夫妻から最後に頂いたお花

日本での最後の晩餐に来て下さった夜

今頃、お二人はメルボルンですね

正直言うと、めっちゃ寂しいです（泣）！

お客様とのお別れは（転勤などで）何度も経験してるのに
やっぱり寂しい。けど、この想い出は財産でもあります。
カウンター族だった謎の男性が、恋人を紹介して下さって、
しばらくして結婚の報告をして下さって、お二人で食事に
通って下さる度に「これ美味しい！」と、見せて下さった
あの笑顔。これこそが、クルルの大事な宝物です。

それにしても、メルボルンかぁ。
ピノ・ノワールとシャルドネの銘醸地じゃないですか。
お二人の大好きなブルゴーニュワインを彷彿とさせる
ワインのメッカ。まったくもう、ツイてるんだから！
お二人の笑顔を時々想い出しながら、眩しいメルボルンの
太陽に負けないように、クルルも頑張っていきますよ！

今井ご夫妻、アビアント！