壁の向こう側
先日、特別コースご予約のお客様から、「あん肝食べたい!」
というリクエストを頂いたんです。あん肝って言ったらアレですね、
ポン酢と紅葉おろしで日本酒と一緒にキュッといきたいところ…
なんだけど、これをフランス料理に仕立てて しかもワインのアテに
するには…そう、あの独特の魚卵っぽさを解消しなくてはなりません。
この分野で日本酒にワインが勝てるのかいささか不安でしたが、
せっかく頂いたリクエストですからね、全力でお応えしなくては!
で、洋風にアレンジするならやっぱり芳醇なリキュール系でマリネ
するのが一番…という事で、今回はポルト酒、それもホワイトポート
(程よく優しい甘味の白いポルト酒)を贅沢に、たっぷり使いました。
これは試食で作ってみたバージョンですが…
北海道産鮟鱇のポワレと白ポルト風味のあん肝
表面カリカリに中はジューシーにポワレした鮟鱇の白身と、
白ポルト酒でマリネしてからゆっくり長時間火を入れてから
テリーヌ型に入れて冷やし固めたあん肝。その二つが今
お皿の中で奇跡の、そして運命の再開を果たすのです!
「あれ?ひょっとしてあん肝さん?なんか垢抜けちゃって~」
「おっ、白身さんかぁ!そちらこそカリッと焼けちゃって~」
芳醇なトリュフオイル香る 鴨の濃厚なジュのソースで。
これはアルザスの芳醇な白ワインなんか合いそうだ!という事で
試しにシルバネール(アルザスの香り豊かな白ワイン)とちょっくら
合わせてみたところですね、何て言うか…いいですよ、コレ!
年に一度 やっと逢えた織姫と彦星みたいな切なさを感じる
極上のマリアージュ!なんて気持ち悪いセリフをこれみよがしに
言いたくなるほどの絶妙感なんだから。 あん肝のリクエストを
下さったお客様にこの料理を食べて頂く際には、是非このワインを
お薦めしなければ!と勝手に興奮状態になってしまいまして
(でもお客様がヤダって言ったら笑顔でサクっと引っ込める覚悟は
しておりますけどね)、まぁ結局そのお客様には、この料理と
シルバネールを合わせて頂く事に成功致しまして、そんでもって
「すごくピッタリだった~!」というお言葉を頂戴する事が出来た
のでございます。 あ~良かった!!
あん肝には日本酒…の壁を超えて(というか無理矢理よじ登って)
向こう側に降りて、その土地の端っこに「ワイン用スペース」を
ちょこっと作れたような気がします。
するんですけどね。