あんたの店のスープ
「舞茸と北あかりのスープめちゃ旨いよね、あんたの店の」
と何度も言ってくれたので、彼女の病室に差し入れしたら
それはもう嬉しそうに食べてくれたのが最後の想い出。
うちの店の事を「あんたの店」と唯一言ってくれる人で、
長く友人でいてくれて、呑み友達で、最高の相棒だった人。
「フランス料理なんて敷居が高すぎて怖いじゃん」といちいち
文句を言いつつも、毎年ご主人の運転で双子の娘たちを連れて
群馬の山奥から(って言うと必ず怒る)はるばる来てくれて
秋生まれの娘たちの誕生会をうちの店でやってくれて、
来るたびに「やっぱり舞茸のスープ最高に旨いわ~」と
元気に豪快に笑っていたくせに、去年の秋を待たずに
あっという間に天国に行っちゃった人。
舞茸と北あかりのロワイヤル仕立て

温かいフランとそのスープ
私事の話で大変恐縮なのですが、そんな事があったもので、
去年の秋から年末にかけてなんだか現実味がない日々を過ごし
まだ相棒がいなくなった事が現実として体に入ってこなくて、
目の前のことをこなす日々だったのですが、年末年始になり
長電話をする相手がいなくなった事にようやく気付いて、
急に深いプールに落とされたような気分になり、気づいたら
寝言を更新することも出来ず(文章を書く気分になれず)
いつの間にかこんなに長い間放置してしまいました。
(まぁ誰も見てないとは思いますが~( ´∀` )汗汗)
あれから一年以上が経ち、最近その彼女の忘れ形見である
双子が遊びに来てくれて、天国に行った相棒の話をしている途中
ふいに次女が「寝言やめちゃったの?」と言ってきたので、
「いや、やめたわけじゃないけどさ、休憩中。」と言ったら
「やったほうがいいよ。ママも好きだったし」と相棒そっくりの
顔して言うので、そんなこんなで久しぶりに失礼しております。
あんたねぇ、天国に行ってまでいちいち指図すんじゃないよ。
ところで、双子はどちらもちゃんと就職してちゃんとやってます。
ご主人も寂しそうだけど、まぁ双子がいるから大丈夫です。
舞茸スープ食べたくなったらおいで。いつでもいいから。