ポケット
あれから、もう2年7ヶ月以上経つなんて。
福島県、いわきの海にはまるで昔と変わらない
穏やかな風が吹き抜けていました。
まるで昔と変わらない風景
何度も遊んだ海
サーファーの姿もちらほら見かけました
マナーの良い人達ばかりで、ゴミひとつ落ちていません
懐かしい海、温かい海、恵の海
ただいま
まるで何事もなかったみたいな優しい静寂
でも、あれは確かに現実に起こったこと
ここに建っていたはずの家、沢山の想い出
2年経って、ようやく瓦礫もなくなりました
表札のついた壁だけが残り
静かに海を眺めています
数年前に整備したばかりの海の公園
オブジェは全部失くなっていました
ぐにゃりと曲がった柵
津波の威力を物語ります
怖かったでしょう、ゴメンね、何にも出来なくてゴメン
いっぱい与えてくれたのに、いっぱい奪った海
お米だって、野菜だって、果物だって、新鮮な魚だって!
何でも豊かな福島は、昔から内需で回っている県です。
今も変わらず美味しい食材を作り続け、自分達で消費してる
逞しい人々、悲しみと付き合いながら笑って働いている人々。
当事者じゃなくてもチケットを手に入れる事はできます。
不確かな噂を流して(又はそれを信じて)福島の人々を傷つけるチケット
正確な情報をきちんと把握して、復興を願う一員となるチケット
この浜辺の家には沢山の人々が住んでいました。
旨い魚を釣る腕の良い漁師達も沢山いました。
学校も、病院も、老人ホームも、煙草屋さんもありました。
あの日の記憶を、選択権のチケットを、沢山の人が
温かいポケットに入れてくれますように。