選ばれる瞬間まで
料理の注文が入るのを、ワインセラーの中で
じっと聞き耳をたてているやつらがいます。
例えば、ハチノスのトマト煮込みの注文が入ると、
セラーの中で南仏の赤ワイン達が「今日こそ俺の
出番じゃない?」とざわめくし、ニース風サラダの
注文が入るとロゼワイン達が「呼ばれるかも!」と
浮かれ、仔羊ロティの場合にはボルドー赤ワイン達が。
ワイン達はみんな料理とのマリアージュを夢見て、日々
コルクのわずかな隙間から聞き耳を立てているのです。
ところが、サーモンの注文が入ると‥‥
![](https://queueleuleu.com/wp-content/uploads/2017/11/A5CDDEBB-F6CA-4525-BD1F-697D272B48E1-300x225.jpeg)
ちょっとセラーの様子が違います。
自信ありそうなロワールの銘醸サンセールも、
いつもはドヤ顔のボルドー白も、シャブリも、
何故か誰もざわめきません。ただひたすらに
じっと、お客様に選ばれるのを待っています。
ノルウェーからフレッシュのまま届くサーモン様
![](https://queueleuleu.com/wp-content/uploads/2017/11/B9F7D8FE-65A2-45D0-A175-C0FADE07089C-300x225.jpeg)
「めっちゃ新鮮やで!」と、得意げな顔
お刺身用ではありますが、そこはやっぱり
![](https://queueleuleu.com/wp-content/uploads/2017/11/61040380-0D50-4505-8CC7-A595FD833246-300x225.jpeg)
ワインに合うようにしっかり手をかけます
新鮮な内にハーブの効いた合わせ塩で12時間マリネして
その後、桜のチップで自家燻製(スモーク)を6時間ほど
かけ、出来上がったものは真空パックして旨味を閉じ込め
冷蔵保存。オーダーを頂いてから、厚めにカットして
程よい火入れでミ・キュイ(半生風)に仕上げます。
爽やかなグレープフルーツソースがサーモンの甘い脂と
融合し、旬の茹でたて(又はソテーしたて)野菜が
サーモンの濃厚で滑らかな旨味を引き立ててくれます。
ほんのりハーブを感じるスモークの香り
![saumon-6](https://queueleuleu.com/wp-content/uploads/2018/07/4e979ae1b7b8f8ab92c6d144be650a6a-300x225.jpg)
これでワイン呑まないなんて無理でしょ?
サーモン料理にはどんなワインが合うかって?
もう、これは各店舗のソムリエの間でも意見が
分かれるところ。王道はソーヴィニヨンブラン、
でもスモーク香には樽香のシャルドネがいいだろう、
しかし柑橘のソースならリースリングだ、いやいや
ロゼ色のサーモンにはサンセールのロゼがお洒落だ、
軽めのローヌ赤を冷やしめで提供するのもアリだ、
なんて意見が続々出る訳です。そう、魚なのに
肉のようで、繊細なのに複雑味に富んだ味わい。
こうなったら、ワインはもうお客様のお好み次第。
だからこそ、ワインセラーの中で、ワイン達は
じっと固唾をのんで見守っているのです。