見た目とのギャップ
ガツン!と食べて呑んでゲラゲラ笑っていただくのが
ビストロの醍醐味…みたいなことだと以前書きましたけど
ガツンとした料理はガツンとした仕込み…ではなく、割と
チマチマした(良く言うと繊細な)仕込みから生まれてきます。
例えばガツン系代表の通称トリップ(イタリアンではトリッパ)。
仏、伊、欧州料理などいろんな店でやっている定番料理ですが、
国や地方、お店によっても色んなタイプがあるもんです。
具材から調理法、調理時間や仕上げ方なんかにお店の色が
とっても現れるところなんです。個性というかコンセプトがね。
うちの店では「ハチノスと牛スジ、アキレス腱のトマト煮込み」
という料理名でやっていますが、「白にも赤にも、もしくは
シャンパンにも合わせられるトリッパ」をコンセプトにしているので
料理のイメージとは裏腹にすごく仕込みはチマチマやってます。
全ての具材を別々の鍋で水から茹でて3回茹でこぼししてから
ハチノスは5時間、牛スジは8時間、アキレス腱は8.5時間程じっくり
下茹でします。徹底的に不純物を取り除いたこの具材達は限りなく
透明に近い白、この世で一番美しいモツ集団に生まれ変わっています。
最後はその美しい集団を一緒にして、これまたチマチマ仕込んだ
特製トマトソースと一緒に3時間以上コトコト煮込んでいきます。
仕上げにはオレンジとレモンの皮を練りこんだバター
(ブールノワゼット)を乗せてお皿ごとオーブン焼きして
表面を香ばしく、中はしっとりしたトリップに仕上げます。
ガツン!としたお皿はチマチマの積み重ねによって
成り立っているんです。見かけによらないもんです。